仕事や学びの場で「どうすればよいですか」と尋ねられたとき、知っている答えを早く渡すことは、一つの助けになります。ただ僕は、答えだけで終わらせず、そこへたどり着くまでに何を見て、どこで迷い、なぜその選択をしたのかまで伝えたいと思っています。状況が変わったときにも、自分で考え直せる材料を残すためです。
僕自身、早く前へ進んでほしいという気持ちが強いほど、先に結論を話してしまうことがあります。その場では進めても、相手の中に判断の手がかりが残らなければ、次に似た課題へ向き合ったとき、また答えを待つことになります。支えるつもりが、考える機会を小さくしてしまうこともあるのだと感じます。
判断の理由が残れば、状況が変わっても考え直せる。
同じ問いでも、目的、相手、使える時間によって、ふさわしい答えは変わります。だから「これが正解です」と方法だけを渡すより、「今回は誰のために、何を優先し、どの条件を確かめたか」を共有する方が、学びは別の場面でも生きてきます。
うまくいかなかった考えや、最後まで迷った選択肢も、隠さずに伝えたいと思います。迷いのない判断ばかりに見えると、考える途中で立ち止まることを、失敗のように感じさせてしまうかもしれません。分からないことを確かめ、比べ、選び直す過程も、仕事の大切な一部です。
答えは一度の助けに。考えた順番は、次の一歩の支えに。
伝える順番を、三つに分けてみる。
まず共有したいのは、何を良くしたいのかという目的です。方法から話し始めると、同じ作業を繰り返すことが目標になりがちです。誰にどんな状態になってほしいのかが分かれば、方法が使えないときにも、別の道を考えられます。
次に、判断に使った材料と迷った点を伝えます。確認した事実、まだ分からないこと、選ばなかった案とその理由を分けて話します。すべてを詳しく説明する必要はありませんが、結論の裏側が見えれば、受け取る方も自分の視点を加えやすくなります。
最後に、次は自分で何を確かめればよいかを一緒に決めます。たとえば案内文を考えるなら、文章を渡して終わりにせず、読む方が最初に知りたいことは何か、事実と願いが混ざっていないか、次の行動が分かるかを確認する。見る場所が分かれば、自分の言葉で直す力につながります。
その後に、「どこまで理解できましたか」と試すのではなく、「次に同じことが起きたら、何から確かめますか」と聞いてみます。答えが違っていても、すぐに正す前に、そう考えた理由を伺います。そこには、僕が見落としていた視点があるかもしれません。
教えることは、一方から知識を渡すことだけではないと思っています。質問を受けることで、自分が無意識に省いていた前提や、言葉にできていなかった判断基準に気づかせていただくことがあります。率直に尋ねてくださる方、考えを聞かせてくださる方がいるからこそ、僕自身も学び直すことができます。本当にありがとうございます。
すぐに役立つ答えと、次も自分で考えられる手がかり。その両方を丁寧に渡せる人でありたいです。これからも、結論だけを急がず、考えた順番を分かち合いながら、一人ひとりが自分の言葉で次の一歩を選べる学びを、皆様と一緒につくっていきたいと思います。
木ノ根 雄志