YUJI KINONE 木ノ根 雄志
新規事業 読了目安 5分

新規事業は、小さく試す前に、
問いを一つに絞る。

最初の試みで全部を確かめようとせず、いま最も分からないことを一つ選ぶ。結果が期待と違っても、次の判断へ進める試し方を大切にしたいと僕は考えています。

新しい事業を考えると、できることを増やし、魅力を分かりやすく整え、なるべく完成に近い形で試したくなります。けれど僕は、最初の試みを小さな完成品にするよりも、いま最も分からないことを一つ確かめる機会にしたいと思っています。問いが絞れていれば、思いどおりの結果でなくても、次に何を変えるかを選べるからです。

僕自身、役に立つものを届けたいという気持ちが強いほど、「これもあった方がよい」「ここまで整えてから見ていただきたい」と考えがちです。その思いは大切ですが、一度に多くを盛り込むと、どの工夫が届き、どこで迷わせてしまったのかが見えにくくなります。いただいた声も広がり、次の判断に結びつけられないことがあります。

小さくするのは、規模よりも、確かめる問い。

新規事業では、仮説という言葉を使うことがあります。これは、まだ事実だと決まっていない見立てのことです。誰が、どんな場面で困り、何を価値として受け取り、どのような行動を選ぶのか。始める前に、その見立てを自分たちの言葉で短く置いてみます。

次に、その中で最も分からないことを一つ選びます。そもそも困りごとはあるのか。案内は理解できるか。安心して最初の一歩を踏み出せるか。使った後も続けたいと思えるか。どれも大切ですが、最初から全部を同時に確かめようとすると、結果の理由が分からなくなります。

たとえば、新しい相談の窓口を試すとします。「申し込みの操作ができるか」と「安心して相談したいと思えるか」は、別の問いです。まず何を確かめたいのかを決めれば、用意するものも、伺う言葉も、見るべき反応も変わります。機能を減らすことが目的なのではなく、判断に必要な材料をはっきりさせることが目的です。

試す問いが一つなら、期待と違う結果も、次の一歩の材料になります。

結果ではなく、次の判断が残る試し方にする。

試す前には、何を見て、結果ごとにどう判断するかまで決めておきます。反応があればすぐに広げるのか、もう一度同じ条件で確かめるのか。反応が少なければ、必要がないと考えるのか、伝え方や届ける相手を見直すのか。先に分けておくことで、都合のよい解釈だけを選びにくくなります。

声を伺うときも、案への賛成を集めるのではなく、どこで立ち止まったか、何が分かりにくかったか、その場面で本当は何が必要だったかを教えていただきます。率直な違和感は、企画を否定するものではありません。自分たちだけでは見えなかった前提を知らせてくださる、大切な手がかりです。

確かめたいのは、まず誰のどんな場面なのか。今回の問いは一つになっているか。結果を受けて次に何を決めるのか。この三点を短く書き、関わる方と共有します。試している途中で別の課題が見つかったら、混ぜて答えを出そうとせず、次に確かめる問いとして残します。

良い反応をいただくと、早く広げたい気持ちも生まれます。そんなときほど、その反応が別の方や別の場面でも続くのか、もう一度丁寧に見たいと思います。一人の声を軽く扱わず、同時に、まだ分からないことを分かったことにしない。その誠実さが、事業を長く育てる土台になります。

試みに時間をくださる方、使いにくさを率直に伝えてくださる方、こちらの見立てを問い直してくださる方。その一つひとつのおかげで、僕たちは思い込みから離れ、目の前の必要に近づくことができます。本当にありがとうございます。いただいた声を「検証の材料」で終わらせず、何を学び、次にどう生かすのかを、できる範囲で丁寧にお返ししたいです。

大きく始めることより、次の判断へ進める小さな問いを置くこと。これからも、分からないことを正直に一つずつ確かめながら、関わってくださる皆様と、必要とされる事業を着実に育てていきたいと思います。

木ノ根 雄志

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