ご縁を大切にするとは、出逢いの数を増やすことではなく、出逢った後も相手の想いを忘れず、小さな約束と感謝を行動で返し続けることだと僕は考えています。名刺を交換したことや、一度お話ししたことだけで関係が生まれるわけではありません。その方が何を大切にし、何に悩み、どのような未来を望んでいるのかを心に留める。そこから、ご縁は少しずつ信頼へ変わっていくのだと思います。
出逢いが多いほど、すべてに応えられない自分も見えてくる。
僕はこれまで、多くの方との出逢いに支えていただきました。新しい考えを教えてくださった方、挑戦する機会をくださった方、うまくいかないときに率直な言葉をくださった方。振り返ると、今の僕の判断や活動の中には、出逢った方々から受け取ったものが数多く息づいています。
一方で、目の前の仕事に集中するほど、ご連絡が遅くなったり、いただいた言葉へ十分なお返しができなかったりすることもあります。「大切にしたい」という気持ちだけでは、相手には伝わりません。だからこそ僕は、ご縁を精神論だけにせず、日々の小さな行動へ置き換える必要があると学びました。
ご縁への感謝は、覚えているだけではなく、行動にして初めて届く。
出逢った後に大切にしたい、四つの行動。
第一は、「相手が大切にしていたことを残す」ことです。肩書きや連絡先だけでなく、お話の中で印象に残った想い、困りごと、応援したいことを短く記録します。次にお会いしたとき、前回の話を覚えていることは、特別な技術ではなく、相手の時間を大切に受け取ったという意思表示になります。
第二は、「小さな約束ほど早く返す」ことです。資料を送る、確認して連絡する、人をご紹介する。大きな成果を急ぐより、交わした約束を一つずつ守る方が、信頼は確かに育ちます。すぐに答えられない場合も、いつまでに確認するかを伝えるだけで、相手の不安を減らすことができます。
第三は、「役に立てないときも、正直に伝える」ことです。ご期待に応えたい気持ちから、無理に引き受けることが相手のためになるとは限りません。できること、できないこと、確認が必要なことを丁寧に分ける。そのうえで、別の方法や適した方が思い浮かぶならおつなぎする。関係を守るためにも、曖昧な期待を残さない誠実さが必要です。
第四は、「用事がないときにも感謝を思い出す」ことです。何かをお願いするときだけ連絡するのではなく、近況を拝見したときに一言を届ける、教えていただいたことが役立ったと伝える、いただいたご縁を次の誰かへつなぐ。見返りを求めずに感謝を返すことが、関係を取引ではなく、長く支え合えるつながりにしてくれます。
実務では、出逢った日のうちに「相手が大切にしていたこと」「自分が約束したこと」「次に返せる小さな価値」の三つを書き留めます。そして、約束には期限を置き、難しい場合は黙ったままにせず早めにお伝えする。忙しいときほど、この基本を丁寧に守りたいと思っています。
もちろん、僕もすべてのご縁に十分なお返しができているわけではありません。行き届かなかったことを思い返し、反省することもあります。それでも、もう一度声をかけてくださる方、変わらず応援してくださる方、率直に気づきをくださる方の存在に、何度も救われてきました。
出逢いは偶然でも、その後の信頼は日々の選択で育てられます。これからも一つひとつのご縁を当たり前と思わず、いただいた時間や想いへの感謝を、小さくても確かな行動に変えていきます。そして、僕が受け取った優しさや機会を、次の誰かの可能性へ丁寧につないでいきたいと思います。
木ノ根 雄志