YUJI KINONE 木ノ根 雄志
教育・学生支援 読了目安 5分

学びは、答えを渡すより、
問いを一緒に育てる。

若い人や学生の学びを支えるときは、こちらの答えを急いで伝える前に、本人が考えていることを言葉にできる時間をつくるよう心がけています。

若い人や学生の学びを支えるときは、こちらの答えを急いで伝える前に、本人が考えていることを言葉にできる時間をつくるよう心がけています。「何が見えているのか」「どこで迷っているのか」「次に何を試したいのか」を一緒に確かめる。その対話が、自分で選び、自分の足で次へ進む力につながると僕は考えています。

良かれと思う答えが、考える機会を小さくすることがある。

誰かから相談を受けると、少しでも早く役に立ちたいと思います。僕自身も、これまでに学んだことや、遠回りを減らせそうな方法が浮かぶと、すぐに伝えたくなることがあります。限られた時間の中では、答えを示す方が親切に見えることもあります。

けれども、こちらが話すほど、相手が考えていたことを言葉にする時間は短くなります。表面的には納得してくれても、本人がなぜその道を選ぶのかが曖昧なままでは、状況が変わったときに立ち止まってしまうかもしれません。正しいことを伝えようとする気持ちが、知らないうちに相手の選択を狭めることもあります。

僕も後になって、「もっと先に聞けばよかった」と振り返ることがあります。こちらが想像していた悩みと、本人が本当に迷っていたことが違う場合があるからです。言葉を急がずに待つと、その方が大切にしていることや、すでに自分なりに試してきたことが見えてきます。その姿から、教える側だと思っていた僕の方が学ばせていただくことも少なくありません。

答えは前へ進ませます。問いは、自分で進む力を残します。

考えを深めるために、四つの問いを置く。

一つ目は、「いま、分かっていることは何か」です。できていない点から始めず、本人が見つけた事実、感じた変化、すでに試したことを聞きます。自分の中にある材料に気づくと、学びは誰かから与えられるものだけではなくなります。

二つ目は、「どこで迷っているのか」です。分からないことを一つに決めつけず、知識が足りないのか、選択肢が多いのか、失敗が不安なのかを一緒に整理します。迷いの場所が見えれば、必要なのが説明なのか、経験なのか、安心して相談できる相手なのかを考えやすくなります。

三つ目は、「何を大切にして選びたいか」です。速さ、成果、周りへの配慮、自分の納得など、判断の軸は人によって違います。僕の基準をそのまま渡すのではなく、本人が守りたいものを聞き、その軸に合う選択肢を一緒に考えます。

四つ目は、「次に小さく試すなら何か」です。最初から大きな決断を求めず、調べる、誰かに聞く、下書きをつくる、短い期間だけ試すなど、確かめられる一歩にします。試した後に何を見て振り返るかも決めておくと、結果だけで自分を否定せず、次の学びへつなげられます。

僕は対話の中で、すぐに良し悪しを判断せず、まず相手の言葉をそのまま受け取るようにしています。理解が合っているかを言い換えて確かめ、必要であれば、自分の経験は「一つの選択肢」として伝えます。そのうえで、安全や約束に関わることは曖昧にせず、なぜ守る必要があるのかまで丁寧に説明します。

問いを大切にすることは、答えを隠すことでも、すべてを本人だけに任せることでもありません。分からないところは一緒に調べ、困ったときに戻れる関係をつくり、決めるために必要な情報を渡す。その支えがあるからこそ、安心して自分の考えを育てられるのだと思います。

率直な迷いや未完成の考えを話してくださる若い皆様、学びの場を支えている方々、そして僕に新しい見方を教えてくださるすべての皆様に、心から感謝しています。一人ひとりの言葉に向き合うたび、学びは一方通行ではなく、互いに育て合うものだと感じます。

すぐに答えを出せない時間にも、大切な意味があります。問いを急いで閉じず、本人の言葉が生まれるのを待ち、次の小さな一歩を一緒に考える。これからも、教えることより先に耳を傾け、それぞれの可能性がその人らしい形で育つよう、謙虚に寄り添っていきたいと思います。

木ノ根 雄志

すべてのコラムを見る